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前回は日本製デニムの産地として知られている「岡山県」を紹介しましたが、もう一つ忘れてはならない地域として「広島県」が挙げられます。

この地域の紹介として特筆すべきはなんといっても福山市のデニム生地メーカー「カイハラ」です。

一般にデニム生地の製造工程は
綿花を糸にする「紡績」→糸を染める「染色」→布に織っていく「織布」→生地としての最終仕上げを行なう「整理加工」
という流れがありますが、その全てを自社内で一貫して行っているのは、国内ではこの「カイハラ」のみです。

自社内で非常に多くの工程を経て完成したカイハラのデニム生地

「カイハラ」は1893年に、絣(かすり)と呼ばれる伝統の織物技法による「手織正藍染絣」の製造会社として生まれました。

しかし戦後、そして高度経済成長期になるにつれ農作業洋服として用いられていた「絣」による生地の需要が減少。
そこでカイハラは絣の技術を洋服用に落とし込んだ「広幅絣」を開発し、中近東向けのサロン(ロングスカート状の腰布)製造で業績を伸ばしますが、1968年に中近東の情勢不安と英国通貨の切り下げにより生産中止に追い込まれます。

そして1970年、カイハラはデニム生地製造への転換を行ないました。

当時、国内にロープ染色機(滑車を使い糸を染液にくぐらせる)が存在しない中、自社開発に成功し、絣の技術をもとに国内初のロープ染色デニムを完成させました。

自社内のロープ染色機で経糸を染めていく様子

全工程を自社内で行なっているため、高い品質を保ったうえで安定的に供給できることを強みとし、現在では高級デニムの国内シェアの約50%、海外への輸出シェアの約70%をこの「カイハラ」が占めています。

そんな「カイハラ」のデニム生地は、Levi’s・EDWIN・Lee・GAP・POLO・Rag&Bone・ユニクロなど世界中のブランドで使用され、世界20カ国以上に輸出されています。

現在では広島県に4箇所とタイ・バンコクに工場を構え、世界基準の高級デニムを作り続けています。

カイハラのデニムを使用したEDWIN・Lee・ユニクロのジーンズやパンツ

「カイハラ」はまさしく日本のデニム産業を支える「大黒柱」として、「ジャパンデニム」を語る上では欠かすことのできない存在となっています。

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