ジャパンデニムの特徴として最も挙げられるところは、なんといっても「セルビッチ(selvedge)」でしょう。
国内の方はもちろん、海外の方が初めてジャパンデニムの生地を目にした際は、確実にこの部分から注目するといっても過言ではありません。
この「セルビッチ」は「旧式力織機(シャトル織機)」で生地が織られた際に、生地の左右両端がほつれないようにつけられた耳の部分の事を指します。
これがいわゆる「赤耳」と呼ばれるものです。
なぜ「赤」なのかといえば裁断時に目立つように赤色にしたそう。
最近では「赤」ではなく色を変えてオリジナリティを出しているブランドも多くあります。
つまり、この「セルビッチ(赤耳)」があるということは旧式力織機で織られた生地だということで注目されるポイントなのです。
※ただ現在は、耳付きでも近代の革新織機(後述)で織られたものが多数ありますので注意が必要です。
「赤」ではなく綿の生産国旗の色を取り入れたセルビッチ
では、なぜ旧式力織機で織られたものが良いとされるのか。
それは「生地の仕上がり」と「生産効率」にあります。
旧式力織機は「シャトル」と呼ばれる物体を縦糸の間にくぐらせながら縫い上げるのが特徴で、
糸につける糊の量も少ないため織られた生地はふくらみのある風合いが生まれ、凹凸感のある仕上がりになります。
それに対し、近代的な革新織機(エアージェット織機を例にとります)は空気圧で織っていく仕組みとなり、糸につける糊の量が多く、織る際の糸への張力が強いため生地表面が均一で綺麗な反面、平坦な仕上がりとなります。
旧式力織機の要となる「シャトル」
違いはこれだけでなく、さらに大きな違いが仕上がる生地の横巾(はば)にあります。
旧式力織機は仕上がる生地の横巾が80cm前後であるのに対し、革新織機は倍近い150cm(W巾という)も織ることが可能です。
通常の生地は50mで1ロール(1反)になっており、スタンダードなジーンズを1本つくる場合、
革新織機で織った生地でしたら約1.2mから1.5m程の要尺を必要とするところが、旧式力織機の生地の場合は約2.5mも必要になります。
結果として旧式力織機がセルビッチデニム1本分の生地を織る間に、革新織機はノーマルのデニム5本分の生地を織ることができるのです。
織機の違いにより生産効率が大きく異なる
この生産効率と仕上がりの違いにより、旧式力織機で織ったセルビッチデニム生地は高価でありながらも、人々の目を惹き続けて止まないのです。